中井正裕・北米総局特派員(ワシントン)『毎日新聞』2022年3月26日
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20220324/biz/00m/020/017000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=premier&cx_mdate=20220326
(以下、記事からの抜粋です)
「ロシアの侵略者に死を」。ロシアのウクライナ侵攻では、ネット交流サービス(SNS)が情報戦争の舞台になっている。フェイスブックがそんな暴力的発言を一時容認したことが明らかになり、厳しい批判を浴びた。
メタ(旧フェイスブック)やツイッター、アルファベット傘下のグーグルなど米SNS大手は、ロシア国営メディアの投稿を制限するなどウクライナを支援している。これまでSNS各社は「表現の自由」と「暴力的表現の排除」のバランスに苦心してきたが、戦争という異常事態で、どこまで暴力的な表現が許されるのかという難問を突きつけられている。
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ロシアと欧米諸国の情報戦争が激化するなか、10日の米ロイター通信の報道で、メタがフェイスブックとインスタグラムで「ロシアの侵略者に死を」などの暴力的な投稿をウクライナ国内で一時容認したことが明らかになった。
メタの対応は人権団体から「暴力をあおる行為」と批判を浴び、メタのニック・クレッグ社長(国際問題担当)は13日に「あくまでウクライナを防衛する人々の言論を守るための措置。ロシア人に対する暴力を容認せず、国家元首の暗殺を呼び掛けるような表現は認めない」と説明して当初の方針を撤回した。
一方、ロシア政府はメタに激しく反発し、14日までにロシア国内でフェイスブックとインスタグラムへのアクセスを遮断。ロシアの裁判所は21日、メタを「過激派組織」に指定し、フェイスブックとインスタグラムのロシア国内での活動を全面的に禁じた。
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フェイスブックやツイッターは「政府や政治家の発言には社会的な重要性がある」として比較的緩い投稿規制を適用しており、今回も従来通りの対応だと主張している。ただ、ツイッターは「我々は公共利益を考慮した利用ルールを一貫して運用しているが、ウクライナの戦争は政府や国営メディアに対する利用規則の運用に複雑な課題を投げかけている」と苦悩をにじませている。
SNSの投稿規制は平時と戦時で異なる基準が求められるのだろうか。米メディア専門家はこう指摘している。「戦争当事国の主張をIT企業が規制するのは非常に困難だ。戦争の現実として受け入れるしかないのではないか」
【SatK】