「われわれは彼ら〔=ウクライナ人〕を優しく扱うのをやめて、完全に包囲して、送電網から切り離してしまうべきではないか?」
ロシアのピアニスト、ボリス・ベレゾフスキー(1990年のチャイコフスキー国際コンクールで優勝)が、ロシア国営放送のTV番組でこのように発言した。
この主張に対して、この議論に加わっていた兵士は「われわれ自身の手で人道的破局をもたらすわけにはいかない」と応答した。
ベレゾフスキーは、以下のようにも述べた。
「西側のメディアは嘘をついている。われわれはこの戦争に勝たねばならないし、その勝利の上に善きものを築かなければならない。結局は真実が人びとに明らかになる。1年も経てば真実が勝利する。」
「〔戦争による世界の石油価格の上昇について〕西側でなにが起ころうと私には関係ない。彼らは勝手に対処するだろう。今後3年間は西側に行かないつもりだから、私はぜんぜん困らないよ。」
この発言に対して、ベレゾフスキーと親しかった音楽家たちから怒りの声があがっている。
パリ室内管弦楽団の指揮者でピアニストでもあるラルス・フォークト
「旧友のボリスがこんなことを言うなんて信じられない。だが、彼の口からそのように語られるのを私は聴いた。彼との友情はこれで終わりだ。」
ベネズエラのピアニスト、ガブリエラ・モンテラ
「大きな失望だ。…音楽的な偉大さと他人の境遇への共感は、かならずしも手に手をたずさえて歩むわけではない。」
指揮者ダリア・スタセフスカ
「これはシニシズムの限界さえ越えている。」
自らの発言をめぐるベレゾフスキーのコメントが、火曜日に発表された。
「西側も現在の劇的な状況に対する責任を負っていると説明しているアメリカや西側の政治学者たちを参照したうえで、私は自分の意見をあのように述べた。だがそれは、この戦争であれどんな戦争であれ、私が容認しているということではない。あの番組に出演したときの私のまことに素朴な意図は、このドラマができる限り早く終わるために可能な解決策を考えることだった。電力供給を停止したらどうかと私が問うたとき、私が考えていたのは、キエフを爆撃するのを回避して、それによってさらにはるかに劇的な人道的破局を防ぐことだった。しかし、私が自分の考えを最後まで述べる前に、私は発言をさえぎられた。今後は、私の芸術にかかわらない質問にはいっさい答えることはない。」
※ベレゾフスキーが出演したロシア国営放送の討論番組の動画
ウクライナ戦争を伝える西側の新聞の1面を並べて見せたうえで、出演者に意見を述べさせる(踏み絵をふませる)構成になっている。右側いちばん手前に立っているのがベレゾフスキー。
※ラルス・フォークトのtweet
I cannot believe these statements of my former friend Boris B. But I hear them coming from his mouth. This friendship is officially over. https://t.co/ZfkT03X42g
— Lars Vogt (@lars_vogt) March 14, 2022