「ガゼタ・ヴィボルチャ」 2022年4月1日付 執筆者:Wiktoria Bieliaszyn
国家機関で雇用された研究者と文化人で、ウクライナでの特別軍事作戦への反対を公言する者は解雇する、とロシア国家院議長ヴャチェスラフ・ヴォロージンが金曜日(4月1日)に警告した。「国家による援助を受けながら国家を裏切る者は、文化、教育、医療その他、国の財政で支えられている組織の地位を辞任するべきだ。」
ヴォロージンはさらに、当局は各大臣に所轄の諸組織の「査察」を要請すると述べた。
国家院議長は、ロシア国内で「われわれの兵士を支援している芸術家」以外に「暖かい楽園に逃れて時が過ぎるのを待っている」連中がいる、と指摘した。
独立派のコメンテーターによると、ヴォロージンのこの警告は、オペラ歌手のアンナ・ネトレプコの発言に対する反応だという。ネトレプコは、水曜日(3月30日)にフェイスブックで、ウクライナにおける戦争への批判を公表した*。
*「私はウクライナでの戦争を明確に非難します。私はこの戦争の犠牲者とその家族に心を寄せています。私の立場ははっきりしています。私はいかなる政党のメンバーでもなく、ロシアのいかなる指導者とも関係していません。私の過去の言動は誤解されていて、そのことを残念に思います。私はこれまでの生涯でプーチン大統領には数回しか会ったことありません。いちばん目立つ機会は、私の芸術に対して与えられた賞の授賞式〔2005年に2004年度ロシア国家賞を受賞〕と、オリンピックの開会式〔2014年、ソチオリンピックの開会式でオリンピック賛歌を独唱〕でした。それ以外には私はロシア政府からいかなる財政的な支援も受けておらず、オーストリアで生活し納税もしています。私は故国としてのロシアを愛しており、私の芸術をとおしてただ平和と和合を手にしたいと願っています。予告していたお休みをいただいたのちに、5月末にヨーロッパで活動を再開する予定です。」
ネトレプコの発言の翌日(3月31日)、ロシアのオペラ界の指導部がネトレプコを批判する声明を発表した。「昨日、この歌手は、わが国の行動を非難した。ヨーロッパで生活し、ヨーロッパの舞台に出演するほうが、祖国の運命よりも、彼女にとっては重要だということがあきらかとなった。」
そして、その翌日(4月1日)に、国家院議長ヴォロージンがネトレプコを裏切り者と呼んだのである。
しかし、ヴォロージンの警告は、ネトレプコだけを念頭においたものではない。
日刊紙「コメルサント」編集部によれば、ロシア内務省は、自由主義的な価値観で知られるモスクワ社会科学・経済学高等学院に対して、講師の一部についての記録の提出を求めている。これは、10名の研究者と社会活動家をあぶり出すことを意図したもので、そのなかには政治学者Jekaterina Szulman、社会学者Grigorij Judina、 評論家Konstanty Gaaze、歴史学者Ilja Budraiskisが含まれている。彼らはいずれもロシア当局を鋭く批判していることで知られる。内務省は、これらの研究者の雇用状況を調査し、学院での勤務による所得を確認することを目指している。
当局は市民による密告も奨励している。すでに、授業でウクライナでの戦争を批判した教師に対して、検察による取り調べが行なわれている。
55歳の教師 Irena Gien は、生徒たちにこう語った。
「ロシアが文明国として行動しないかぎり、制裁が永遠に続くことでしょう。私たちの国は屑であり、北朝鮮と変わりありません。」
彼女は、生徒たちがこの発言を録音していることを知らなかった。生徒たちはこの録音にもとづいて当局に密告した。教師は「ロシア軍の活動にかんする虚偽の情報の拡散」により最大10年の懲役を科される可能性がある。
【SatK】