ウクライナの調査機関「レイティング」が、ウクライナにおける言語をめぐる意識調査の結果を発表

ウクライナの調査機関「レイティング」が、ウクライナにおける言語をめぐる意識調査の結果を発表した。
過去10年間に、ウクライナ語を母語とみなす人の比率が増加し、ロシア語を母語とみなす人の比率が減少している。
https://ratinggroup.ua/en/research/ukraine/language_issue_in_ukraine_march_19th_2022.html
ウクライナ語を母語とみなす人の比率
2012年 57%
2022年 76%

ロシア語を母語とみなす人の比率
2012年 42%
2022年 20%

  • 母語についての意識の顕著な変化は、2012年から2016年のあいだに生じている。3つの理由が挙げられている。
    a) 政府の言語政策へのウクライナ社会の対応
    b) デジタル革命にともなう影響
    c) 2014年のロシアによるクリミアと東部2州の占領がもたらした影響
  • 地域的には、ウクライナ中部・南部・東部で、ウクライナ語への意識の高まりがみられる。
  • 日常生活における言語の使用についても、ロシア語を使用する人の比率が下がっている(2012年:約40% → 2021年末:26% → 戦争勃発時:18%)。
    日常生活でウクライナ語とロシア語を併用する人の2/3が、今後はウクライナ語だけを使うことになってもよいと考えている。
  • 83%の人が、ウクライナ語だけを公用語とすることを支持している。ロシア語を公用語とすることについては、戦争が始まる前は1/4の人が支持していたが、戦争開始後は7%に減少した。
  • 67%の人が、ウクライナ語を話す市民とロシア語を話す市民のあいだに問題は生じていないと答えている。

ウクライナでは、もともと生活のなかでロシア語が使われる領域が大きく、ロシア語とウクライナ語の両方を話せる人も多かった。しかし、2014年のクリミア併合と東部2州への介入以降、ロシアの政治的・軍事的圧力に対するウクライナ社会の反発が高まり、ロシア語を忌避する傾向が強まっていったと考えられる。もともとロシア語の比重の高かった中部・南部・東部でウクライナ語を母語とみなす人の比率が上昇していることは、この調査結果で注目すべき点の1つである。今回の戦争によって、ウクライナ社会の「非ロシア語化」と「ウクライナ語化」はさらに進むであろう。

【SatK】