ウクライナ軍は、徴兵の範囲を成人男性のすべてのカテゴリーに拡大する。
すでに予備役の兵士はほぼ100%動員されている。
軍役登録した地域から移動している者(国内避難者)も、移動先で軍役につくことになる。
女性については、現時点では、本人の同意がなければ軍役に動員されることはない。
https://www.rp.pl/konflikty-zbrojne/art35866201-wojna-na-ukrainie-mobilizacja-poborowych-wszystkich-kategorii-rozpoczeta
月: 2022年3月
ウラジミール・クリチコによる動画メッセージ
「プーチン体制と取引する者へのメッセージ。あなたもプーチンといっしょに戦争していることになるのだ。歴史があなたを見ている。人類があなたを裁くだろう。」
キーウ市長ビタリ・クリチコの弟ウラジミール・クリチコ(元WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級王者。アトランタオリンピックスーパーヘビー級金メダリスト)による動画メッセージ。
Message to those who still do business with Putin‘s regime: you also make war with Putin.
History is watching you.
Humanity will judge you. #Kyiv #StopPutinsWar #Standtogether #Ukraine #FreeUkraine #WeAreAllUkrainians #StandWithUkraine #StopTheWar #StopWar #SupportUkraine pic.twitter.com/Mb6wfj0jfB— Klitschko (@Klitschko) March 15, 2022
アレクセイ・ナワリヌイの次の裁判
ロシアでは、ウクライナ戦争のかげで、アレクセイ・ナワリヌイの次の裁判が進んでいる。
今回の罪名は「金融詐欺」と「法廷に対する侮辱」。
検察官は13年の懲役と120万ルーブルの罰金を求刑している。
❗W Rosji reżim #Putina prowadzi po cichu kolejny proces #Nawalnego. Tym razem za rzekome "oszustwa finansowe" i "obrazę sądu".
Prokurator żąda dla opozycjonisty 13 lat pozbawienia wolności w kolonii karnej i grzywny w wysokości 1 mln. 200 tys. rubli – informuje Nowaja Gazieta pic.twitter.com/vvxrcYUisc
— Biełsat (@Bielsat_pl) March 15, 2022
キーウでの今朝の砲撃による住宅の火災
キーウでの今朝の砲撃による住宅の火災。4人が死亡。
Наслідки обстрілів у Святошинському районі Києва pic.twitter.com/v7g1XHcWNU
— Радіо Свобода (@radiosvoboda) March 15, 2022
EU使節団がゼレンシキー大統領と会談するために列車でキーウに向かっている。
ポーランドのモラヴィエツキ首相、与党「法と正義」総裁ヤロスワフ・カチンスキ、チェコ首相ペトル・フィアラ、スロヴェニア首相ヤネス・ヤンシャというメンバー。
https://wyborcza.pl/7,75398,28223129,delegacja-ue-jedzie-do-kijowa-na-spotkanie-z-zelenskim-kaczynski.html
※ポーランドの2人の政治家については私自身はよいイメージがないし、このタイミングでの訪問はロシアとの停戦交渉にはむしろマイナス要因となる可能性がある。しかも、閣僚でも外交官でもない政党党首であるヤロスワフ・カチンスキが、なぜEU使節団のメンバーに加わっているのか。「カチンスキ」の名前に、少なくともロシア側はよい連想を抱かないであろう。
※ヤロスワフ・カチンスキの双子の弟レフ・カチンスキは、2008年にポーランドの大統領としてグルジアを訪問したさいに、紛争中の南オセチア自治州との境界にあるロシア軍の検問所付近を通行中に銃撃を受けている。その2年後、レフ・カチンスキは、カティンの森事件追悼70周年記念式典に出席するために搭乗していた大統領専用機がロシア西部のスモレンスクで墜落した事故により死亡した。
韓国の反応
大韓航空は、少なくとも4月末まで、モスクワ便とウラジオストク便の運航を停止することを発表した。ヨーロッパと北米東部に向かう便は、ロシア上空を避けるために航路を変更する。
韓国は、約80万ドル相当の軍用ヘルメット、テント、毛布、戦闘食、応急処置用の資材と薬品をウクライナに送ることを決めた。
『毎日新聞』2022年3月14日付より
「ウクライナ危機 足元の「難民鎖国」政策の見直しを急げ」
稲葉剛・立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授
『毎日新聞』2022年3月14日付より引用。
「首相官邸のホームページなどで政府が「ウクライナから日本への避難民の受け入れの推進」と、「避難民」という用語を使い、「難民」と呼んでいないことにSNS上では疑問の声があがっている。
「難民」ではなく「避難民」という言葉を使うのはなぜだろうか。そこには、ウクライナから逃れてきた人々に日本政府が提供するのはあくまで短期的な支援のみであり、国内に安定的に滞在するための法的な地位の保障はしない、という寓意(ぐうい)があるように思われる。
与党・自民党の一部議員はTwitterなどで「避難民」の支援と「難民」の受け入れは全く違う、と強調する発信に力を入れている。
難民受け入れに否定的な保守系議員が恐れているのは、国内外の世論がウクライナ難民支援に動き、日本国内で難民を積極的に受け入れていくことを表明する企業や自治体が続出する中で、長年、国際的に批判されてきた日本の難民認定制度の見直しに議論が発展することであろう。」
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20220310/pol/00m/010/015000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article&cx_mdate=20220314
ロシアのドローンがポーランド領空に侵入していた可能性
「ジェチポスポリタ」の記事によると、ドローンは、13日に爆撃されたウクライナ西部のヤヴォーリウ軍事訓練所の上空を飛行したのち、ポーランド領空内に入り、再びウクライナ領空に戻ったのち、ウクライナ軍によって撃ち落された。
以上はウクライナ軍の発表による。NATOとポーランド政府は、いまのところこの情報を確認していない。
https://www.rp.pl/konflikty-zbrojne/art35863221-ukrainska-armia-rosyjski-dron-wlecial-w-polska-przestrzen-powietrzna
「キーウの花屋さんは今日も営業中。生活は続いていきます。」
A flower shop still open today in Kyiv.
Life goes on. pic.twitter.com/E8NWuRE8c1
— Nolan Peterson (@nolanwpeterson) March 14, 2022
ロシアの航空会社の機体について
バミューダ諸島の民間機登録機関(Bermuda Civil Aviation Authority, BCAA) は、登録されているすべてのロシアの航空会社の機体について、12日24:00以降の認証を停止することを決めた。これにより、ロシアの民間航空機の半数以上が運航できなくなる。
https://wyborcza.biz/biznes/7,177151,28216635,bermudy-uziemily-ponad-polowe-samolotow-rosji.html?&_ga=2.125586313.264149056.1645262042-1157821085.1641979726#S.main_topic_ua-K.C-B.5-L.2.maly
※税制上の利点からパナマやリベリアの船籍をもつ貨物船が多くみられるように、民間航空機の登録先をバミューダ諸島やケイマン島におくことがあるようです。
なぜロシア人は「ナチスのウクライナ」のトップにユダヤ人が立っているという語りに矛盾を感じないのか
ロシアの劇作家アルトゥル・ソロモーノフの「ガゼタ・ヴィボルチャ」への寄稿。
「なぜロシア人は「ナチスのウクライナ」のトップにユダヤ人が立っているという語りに矛盾を感じないのか」
2022年3月13日付
ここ数日、キーウやオデーサの友人たちに電話をかけ続けている。おそらく私の人生で最も困難な会話だ… ハルキウの知人たちは、もう家がない、通りも広場もない、子どもたちの遊び場もない、と語った… キーウの女友だちは、警報のサイレンが鳴り続けて、いつ何時でもシェルターに急いで逃げなければならない、昼夜を問わず命の危険にさらされてもう気が狂いそう、と言った… 結局、彼女はウクライナから避難した。そんなことは彼女には想像もできないことだったし、望んでもいないことだったのだが…
しかし、ウクライナ人たちは、ただ自分たちの意志で国をつくりたかっただけなのだ! ところが、テレビで私たちに繰り返し伝えられるのは、ロシアは誰かを助けようとして動いたのだ、この「軍事作戦」は、ロシア語を話すウクライナのロシア人への、われわれの愛の結果なのだ、ということだ。ああ、なんという他民族へのロシアの「愛」! そのなかで私たちの隣人も私たち自身も焼き尽くされてしまわなければよいのだが。私がこんなことを言うのは、この戦争がロシアにとって、あらゆる意味で完全に破壊的なものであると考えているからだ。道徳的にも、政治的にも、経済的にも。
「国家は死体を必要とするのだ! 死者を必要とするのだ!」
この戦争に私は、豊かでブルジョワ的なモスクワで遭遇した――もちろん、戦闘が始まったという悪夢のようなニュースを聞いても、首都の顔つきは何ひとつ変化しなかった。しかし、すでに最初の日に、恐怖というよりも、もうこれまでのような日々は二度と戻ってこないだろう、という感覚が漂いはじめた。加えて、これからは悪くなるばかりだろう、という感覚も。
偶然の成り行きで、この戦争は、私の戯曲「われわれはスターリンをどう葬ったか」が独立系のTeatr.doc.で初演を迎える日と重なっていた。その関係で、この間に私が会話をしたのは俳優たちと監督と劇場支配人に限られていて、この戦争への反応も、もっぱらいちばん近いところにいる彼らの様子からしか私には判断できない。彼らは全員ショックを受け、ふさぎこみ、混乱していた。こんなときに初演を舞台にかけるのは道徳的に正しいことなのか? でもだからと言って、上演を中止するのは降伏することになるのではないか?――この作品は、全体主義が生まれて、そこから逃れる余地がなくなってしまう状況を描いているのだから。
私たちは上演することにした。初日の夜8時、観客が集まり始めた。それは、これまでに私が目にしたなかで、最も不幸で混乱した観客だった。演劇に出かけるためにやっとのことでベッドから起き上がったんだよ、と知人が私に言った。招待した人たちの多くが、ごめん、劇場に出かける元気がないんだ、と電話してきた。ロビーでの会話ももっぱら戦争のことで、恥ずかしい、罪悪感と無力感で苦しい、と打ち明ける人が大勢いた。そして当然のことながら、なんという、ありえないような「血塗られた」偶然だろう、こんなときにスターリニズムの復活についての作品の初日を迎えるなんて、という話になった…
上演が終わったとき、観客が俳優たちのところに来て、「国家は死体を必要とするのだ! 死者を必要とするのだ! 人間なんて何の価値もない、国家がすべてなのだ!」という科白が舞台から聞こえてきたときの衝撃を語った。リハーサルを始めたときには、この科白が作品の核心であったわけではないのだが、生活の現実が力点の置きどころを変えてしまったのだ。
家に帰ってから、私はテレビをつけて国営放送にチャンネルを合わせた。番組では「ウクライナのナチス主義者たち」と「ロシア軍の勝利」について熱く語っていた。私はテレビのスイッチを切った。まるで1941年のニュースを観ているようだったし、ロシアがナチスドイツと死闘を演じているかのようだったから…
スターリンはいまなお葬られていない
総じて数年来、ロシアにいて、私は、超現実主義的な映画のなかで生きているような感じがしていた。論理と理性は不可逆的に根絶へと向かっていき、それはいまや無用なものとして完全に破棄されてしまったのだ。
だから、「テレビの視聴者たち」は、ユダヤ人が「ナチスのウクライナ」のトップに立っていることにも、わが国の権力が防衛の目的で攻撃していることにも、平和のために戦争していることにも、幸福のために破壊していることにも、まったく矛盾を感じないのである。彼らは、「戦争反対」(”no war”)という言葉が、現代ロシアではほとんど過激派のスローガンのようにみなされることにも問題を感じない。最近、雪に描かれた「戦争反対」を警察官が長靴で踏みつけている動画を見たばかりだ。しかし同時に、私たちは確かに平和を支持しているし、平和のためにあらゆることをやっているのだ。なにしろ、「軍事作戦」が始まったときに、目くらましの言葉が並べられたではないか――ナチズム、ファシズム、勝利、と。最近10年間に大衆の意識を支配してきた、あれらの言葉が。
こうしたことをロシアの外から理解することは、おそらくとてもむずかしい。現代ロシアにとってスターリニズムが現実の問題であることや、スターリンがいまなお葬られていないことが外からは理解しにくいのと同様に。いま一度、私たちの精神のなかで、犯罪的な数学が蘇えっているのだ。左辺には、何百万の無実のまま殺された人びと、何百万の自由を奪われ、搾取され、卑しめられた人びと。右辺には、大規模な建設、戦争の勝利、強力な国家。この悪魔的な論理学の創始者は、いまやますます現実化しつつある。
しかし、ここでの問題は、じつはスターリニズムでさえなく、いまロシアで、イデオロギーの問題についてはきわめて融通無碍で、それゆえに限りなく内的な矛盾を抱えた超帝国が出現しつつあることである。そこでは、過去の全体が等しく理想化される。ツァーリの過去もソ連の過去も、いにしえのルーシの時代も最近の時代も、正教のロシアも無神論のロシアも。現代ロシアは、すべての歴史的段階と過去のシンボルの集合体なのであり、そこではスターリンとニコライ2世、レーニンとエカチェリーナ2世、ツァーリとその暗殺者、「聖なるルーシ」とその破壊者が統一されなければならない。
こういうやり方は、まちがいなく、私たちの精神の健康を損なっている。共産主義については――もちろん誰一人としてそのイデオロギーを擁護する者はもはやいない。「共産党」は、いまや偉大なるフェイクの一部である。共産主義的な過去のうち必要とされるのは、国の強勢と神話的な統一の理念、そして諸民族を兄弟とみなす思想だけである。
プロパガンダを注入され操作されたロシア国民の巨大な部分が、最近20年間のあいだに、ノスタルジックに過去に憧れるようになり、過去をとり戻そうと夢見るようになった。これは喜劇的でもあり、悲劇的でもあった。若者たちさえもが、自分では生きたことのない時代に戻りたいと思い始めたからである。もちろん皆が皆ではないとしても、多くのひとがそう感じだしたのだ。そしていま、私たちは、この集団的ノスタルジーの恐るべき結果を目にしている。そして、このノスタルジーが無神論的なソヴィエト社会主義共和国連邦と聖なるルーシを同時に含んでいることに当惑しない者はいないだろう。
しかし、公式の次元でかくも多くが語られるロシアの宗教的な再生もまた、幻影である。あるいはフェイクであると言ってもよい。これもまた、現実のなかに支えをもたないもう一つの巨大な観念である。私はロシアを正教の国とは呼ぶまい。それは実態ではなく宣言に過ぎない。正教徒だと自称する人たちの多くは、主な祭日に教会に行くだけで、ロシア正教会の歴史も、それどころか聖書に書かれている物語も知らず、新約聖書を間違って引用するのがせいぜいである。「正教徒」を自称したいという欲望は、歴史と文化に自分も属していると表現したり、皆と共有する一種のコードを作ろうとしたりする姿勢のあらわれである。そして、正教会は権力がやろうとすることはすべて絶対的に支持するので、若者たちも知識人も正教会がクレムリンの支部であることを認めている。このことは、もちろん正教会の信用度に影響する。
この幻影とフェイクの海のなかで、現実としての実質を求めて権力と対等にわたり合うことができるものが、ただ一つだけある。それは芸術だ。裁判も、報道も、社会組織も、政党も、議会も、すべてフィクションだ。しかし権力は現実以上のもの、恐ろしいものであり、悪夢のように本ものだ。芸術も同じである。
だからロシアでは、人びとはいつも芸術に、とりわけ劇場に、偉大な思想や強い感情を期待する。それどころか、本当のところは国でなにが起こっているのか、どこに悪があるのか、そして善はどこにあるのかを理解するために芸術が手助けしてくれることを望んでいるのだ。だからロシアでは、芸術はじっさい特別な役割を、使命とさえ呼べる役割を果たしているのだ。芸術にたずさわることは危険だが(あなたが権力と手を結ぶのでないかぎり)、しかし同時にあなたは、あなたの仕事に意味があることを実感する。
このところ、遠くで起こっている騒ぎの反響が私の耳にも伝わってくる。どこかでロシアの劇場やオーケストラの公演が中止されたとか、チェーホフの劇の上演がとり止めになったとか、チャイコフスキーが演奏されなくなったとか、それで私たちの文化にかかわる多くの関係者が仏頂面をしているとか。いまはそんなことで気を悪くしているときではないと私は思う――チェーホフもチャイコフスキーもいなくなることはないし、時が過ぎれば演目に復帰して、劇場やコンサートホールに戻ってくるだろう。
そして、私たちもいなくなることはない。私たちは、文化をとおして自分たちの手でこの破局を防ぐことはできなかった。そしてこの破局が起こってしまったいまこそ、私たちに対する嫌がらせに気落ちしている場合ではないのだ。妄想とフェイクと偏執から、幻覚との闘いから生み出されたこの悪夢のなかで私たち全員が燃え尽きてしまうのでないとすれば、いずれ戦争が終わる時がくる。それはもちろんたいへん厳しいものになるだろうが、おそらくはロシアにとっての再生のチャンスとなる――私たちの歴史の最も醜い側面とのつながりを完全にたち切り、それらを理想化することをやめ、暴力と流血を地政学的に正当化することをせず、刑吏から英雄を生みだすことをしないために。目を覚まし、正常化し、隣り合った国や民族を自らの「愛」によって迫害することをやめるために。自らの境界のなかで自分自身を感じるようになるために――物理的な意味でも、形而上学的な意味でも。
- ロシア語からポーランド語への翻訳者:Agnieszka Lubomira Piotrowska
- 小見出しは「ガゼタ・ヴィボルチャ」の編集部による。
【SatK】
市長の拘束に対する激しい抗議
ロシア軍に占領されたマリウポリで、軍に拘束された市長にかえてロシア側がトップに据えたガリーナ・ダニルチャンカ
「新たな生き方を学ぶときがきました」「挑発に屈してはいけません」
市中では、市長の拘束に対する激しい抗議が続いている。
W okupowanym Melitopolu Rosjanie podstawili swojego przedstawiciela władz. Galina Danilczanka oznajmiła mieszkańcom, że pora "nauczyć się żyć po nowemu" i że mają "nie poddawać się prowokacjom".
W mieście wciąż trwają ostre protesty po porwaniu mera przez Rosjan 👇
🎥 @espresotv pic.twitter.com/rjjVLPCNAw— Biełsat (@Bielsat_pl) March 12, 2022
なぜクレムリンはこの戦争を特別軍事作戦と呼ぶことを私たちに命じるのか?
ロシアの作家ドミトリー・グルホフスキーの「ガゼタ・ヴィボルチャ」への寄稿(3月11日付)。
なぜクレムリンはこの戦争を特別軍事作戦と呼ぶことを私たちに命じるのか?
それは、ロシアでは誰も戦争を望んでいないからだ。誰もが戦争を怖れているからだ。家から生きて出た人びとが鉛の棺桶に入って家に帰ってくるのが戦争だからだ。繫栄している都市が煙たち昇る廃墟と化すのが戦争だからだ。戦争とは永遠の恐怖だからだ。貧しさだからだ。飢えだからだ。集団的な狂気だからだ。
ふつうの人びとはこの戦争を望まなかった。自分の命で対価を支払うことになるからだ。自分の家族を崩壊させ、破滅させることになるからだ。ビジネス界はこの戦争を望まなかった。破産に追い込まれるからだ。わが国のいわゆるエリートたちもこの戦争を望まなかった。世界から切り離されて心地よい居場所を失うからだ。国民全体がそれを望まなかった。戦争が始まるとふつうの暮らしが終わってしまい、戦争の決まりに従った暮らしが始まるからだ。
ウラジーミル・プーチンは全員に責任をなすりつけた
プーチンがウクライナに個人的に戦争を仕掛けたのだ。彼は、まるまる1時間かけて、すべてのチャンネルを使って、なぜ戦争が必要か、国民に説明した。理由はただ1つ、ウクライナは「国家になれない存在」で根本的に存在するに値しない、ということだった。そこにあるのは個人的な憎しみだけで、それ以外に戦争をするいかなる理由もなかった。他にあったのは口実だけだ。
プーチンは自分自身のための栄光が欲しかったのだ。この戦争が彼に栄光を授けてくれるはずだった。彼は電撃戦に期待をかけた。戦争が勃発した日、テレビのプロパガンダ番組は、昼食どきにはキエフは手に入ると満面の笑みをうかべて約束した。しかし、約束の責任をとる用意はできていなかった。
だから、侵略を始めるまえに、彼はロシア連邦の安全保障会議を召集した。「私はなにも知らなかった」とあとで言いそうな面々を全員そこに集めた。そして彼らを既成事実の前に立たせた。それどころか「私は賛成する」と全員に大声で言わせた。世界と独自に平和交渉をやりそうな者全員に責任をなすりつけた。そのうえで、ロシアを実際に治めているのは私ではなくてわれわれ全員である、とプーチンは世界に言った。これで西側は折り合いをつける相手がいなくなるのだ。いつの日かハーグでウクライナとの戦争の裁判が日程にのぼっても、集団全員が被告となるようにしたのだ。そして、そうなることを、この集団のひとりひとりが頭に刻み込むようにしたのだ。
だが、彼らもそのような責任を負わされることにぞっとしたのだ。それは安全保障会議の映像をみれば、はっきりわかる。戦争を始める計画を事前に知らされていなかった様子さえわかる。彼らが怖気づかないですむように、体制全体に責任をなすりつけることに決めたのだ。
ロシア連邦議会の上下両院の議員たちも、この戦争について語ることはなかった。彼らもまた招集され、事実の前に立たされた。そして、安全保障会議の芝居がかった合意にもとづいて、両院の議員たちもまた新たな宣誓を行なうよう促されたのだ。反対の票を投じたり棄権したりすることはできなかった。習い性となった無力さと従順さによってことは運ばれた。しかし、とはいえ――彼らは、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国という傀儡国家の領域のなかでロシア軍を用いることに賛成しただけなのだ。
こうして私たちは犯罪者となった
ところが、われわれの戦車は、ドネツクではなく、ハルキウ、キーウ、ヘルソンに向かった。これは戦争である、ということがあきらかとなった。それについて人びとが問われていない戦争であることが。人びとがそれを怖れ、望んでいなかった戦争であることが。1週間後、この国を待ちうけているのは、神話めいたナチスの信奉者たちの部隊に対する電撃戦ではなく、全ウクライナ軍とウクライナ国民に対する大戦争であることがあきらかとなった。よくわからない理由から奇妙な象徴の体系のもとにおかれたロシア連邦軍は、ラテン・アルファベットのZの文字で識別されて、泥にはまって動けなくなった。わが軍の死者は数百人にのぼった。わが軍の銃砲はめくら撃ちを始め、ウクライナの街の住宅地を破壊した。戦争犯罪ではないかと言われてもしかたない成り行きであることが明白となった。
そしてそうなったとき、体制の犯罪を全国民の犯罪にすり替えることが決められた。すべての人びとを同じ色で塗りつぶすこと。この戦争については知らなかったとか望んでいなかったとか言えないように、私たちを共犯者にすることが決められたのだ。
あらゆる宣伝メディアで繰り広げられ、人びとに襲いかかってくるヒステリーは、ロシア人ひとりひとりの額にZの文字を刻みこむことを目的としているのだ。
兄弟殺しの戦争に対する責任、ヨーロッパの平和を破壊することに対する責任、悪夢のような過去へと逆行することに対する責任をプーチンと彼の体制からとり去って、ふつうの人びとの背中のうしろに彼らを隠すことが必要なのだ。血迷ったグループと戦っているのではなく、全ロシア国民と戦っていると西側に信じこませることが必要なのだ。まさしく自分たちの生き残りをかけた戦争をやっているのだと国民に示すことが必要なのだ。
人びとを戦争で塗りつぶすために、権力は、国民が支持していると見せかけた。ロシアの80の地域からZの旗をひるがえした自動車を集めて官製のデモンストレーションをやった。カザンのホスピスで終末期の医療を受けている子どもたちを白く雪の積もった中庭に集めてZの文字のかたちに並ばせ、上空から小さな患者たちを撮影した。事を起こしてしまってから、この流血の新たな説明を必死になって考えだす。曰く、ウクライナは化学兵器を持っていたのだ、生物兵器も持っていたのだ、ウクライナは核爆弾を作ろうとしていたのだ、先制攻撃しようとしていたのだ。どんな対価を払ってでも、あらゆる嘘を使って、この虐殺には意味がある、それはクレムリンにとってだけではなく、彼ら国民にとって必要なものなのだと、国民に示さなければならないのだ。
私たちはウクライナ人とわが国の兵士たちの血によって塗りつぶされている
しかし、私たちは忘れてはならない。Zを支持することで、私たちはウクライナの民間施設を爆撃し砲撃することを支持していることになるのだ。私たちは数多くの学校の破壊を支持しているのだ。私たちは兄弟の絆をたち切ることを支持しているのだ。家族のなかにある絆も、私たちの国と国のあいだにある絆も、永遠にたち切ることを。私たちはロシアが文明的な世界から聞く耳を持たずに孤立し、避けようもなく衰弱し、デジタル強制収容所の技術をもった中国のための原料供給植民地となることを支持しているのだ。
いまプロパガンダを信じている人びとは、すでに世界中でロシア人が侵略者とみなされていることを忘れてはならない。私たちが戦争犯罪者とみなされるところまで、あと一息だ。そして、それが私たちの歴史の一部となる――永遠に。私たち全員が塗りつぶされている――ウクライナの市井の人びとの血によって、そして徴兵されて「訓練のために」地獄へと送られた私たちの兵士たちの血によって。
これは私たちの戦争ではない。このことを私たちは記憶しなければならない。このことについて語り合わなければならない。私たちのうしろに隠れて彼らに語らせることを許してはならない。
- ロシア語からポーランド語への翻訳者:Agnieszka Lubomira Piotrowska
- 「ガゼタ・ヴィボルチャ」編集部によるタイトルは「ロシアの有名作家:プーチンの目的? ロシア人全員を戦争犯罪者にすることだ」。文中の小見出しも「ガゼタ」編集部による。
※ドミトリー・グルホフスキーは1979年生まれ。ロシアで最も人気のある作家の1人。SF小説『メトロ2033』(2005年刊、日本語訳は小学館より2011年刊)がベストセラーになり、国際的なインターネット・プロジェクト「メトロ2033の世界」を立ち上げた。ポーランドでも著書が出版されている。
※文中にでてくるホスピスの病気の子どもたちによる Z 字を上空から撮った写真は「プーチンの病んだプロパガンダ」と題した次の記事で見ることができる。
https://parenting.pl/chora-propaganda-putina-do-tego-zmusili-dzieci-z-hospicjum
【SatK】