いま、ガザで起きていることは、ジェノサイドと呼ぶべきものにほかなりません。世界が注視するなか、「先進国」を名乗る国々のジェノサイドへの支持または沈黙に後押しされて、電力も医療品も食料も途絶えたガザで、イスラエルは逃げ場のない人びとを見境なく白リン弾その他で空爆し、殺戮しています。日本も、このジェノサイドを黙認する国々の一つにほかなりません*1。ブラックボックスと化したガザで、人間性の底が抜けたような大量殺戮が展開しています。
問題の根源は、イスラエルという国家にあります。「憎しみの連鎖」という常套句では幾度も繰り返されるイスラエルの大量殺戮を説明することはできません*2。イスラエルのアパルトヘイトこそが、この暴力の根源にあります。アパルトヘイトは、1948年から1990年まで南アフリカ共和国が行なってきた人種隔離政策を指すことばとして知られていますが、イスラエルがパレスチナ人に対して長年にわたって行なってきた組織的な抑圧も、まさにこのことばによって説明されるべき人道に対する犯罪です*3。
いま、ガザは、「天井のない監獄」であるとともに、「絶滅収容所」と呼ぶべき状況に置かれているといわざるをえません。なぜなら、「ある特定の集団の全てまたは一部の破壊を目的とする犯罪行為」と定義されるジェノサイドが、ガザで進行しているからです。現在進行形のジェノサイドを前にして、中立的であるという選択肢は存在しません。
イスラエルの暴力に対する街頭での抗議行動に参加する、一人で、あるいは複数の人びととジェノサイドを許さないという思いを伝える、現在進行形の暴力にかかわる情報を共有する、ガザの人びとの救援にかかわる団体を支える、仲間を募って勉強会を開くなど、ひとりひとりの「できること」と「考えること」をいまこそ積み重ねていかなければなりません。
目の前で起きている大量殺戮を、この世界が沈黙と無関心のうちに捨て置くのだとしたら、政治は、文学は、思想は、そして学問は、いったい何のためにあるのでしょうか。日本に住む私たちが沈黙と無関心で応えるならば、自らの意思にかかわらずこの殺戮に加担することとなってしまいます。世界は、どんなアパルトヘイトもジェノサイドも許してはならないという思いをいまこそ表明する必要があると考えます。私たちもまた、人間の自由と命の平等を訴える世界の市民に連なって、この国から、以上の声明を伝えたいと思います。
自由と平和のための京大有志の会
2023年10月30日
*1 10月28日、国連総会は緊急特別会合で、人道目的のための一時休戦を賛成多数で可決しましたが、日本は棄権しました(イスラエルと米国は反対)。
*2 完全封鎖下にあるガザでは2008年以来、数年おきにイスラエルによる大規模な軍事攻撃が繰り返されていますが、2014年には7月から8月にかけて51日間に及ぶ攻撃があり、2200人以上が殺されました(7割が民間人。使用された火薬の量は広島型原爆をTNT火薬に換算したときと同量であると推定されています)。
*3 国際的な人権団体であるアムネスティ・インターナショナルとヒューマンライツ・ウォッチは、2021年、それぞれ、イスラエルはアパルトヘイトであるとする報告書を発表し、国際社会はその廃絶に取り組まねばならないと訴えています。イスラエルの人権団体ベツェレムも、イスラエルをアパルトヘイト国家であるとして、その廃絶を訴えています。
※自由と平和のための京大有志の会主催「〈緊急セミナー〉歴史の忘却に抗して―パレスチナにおけるジェノサイドを見すえながら、危機の時代における人文知の役割を問う」(2023年10月27日@京都大学文学部第3講義室)の録画を下記にアップロードしています。このセミナーでの岡真理さんの講演にこの声明のエッセンスがつめこまれています。ぜひご視聴・拡散にご協力ください!
https://www.kyotounivfreedom.com/speech/20231027_recorded/